角谷鋳金工房

茶の湯釜・鉄瓶の修理・修復

〒581-0818 大阪府八尾市美園町2-107-1
TEL / FAX 072-992-1282

茶の湯釜 ・ 鉄瓶の修理 ・ 修復

鋳鉄の茶釜や鉄瓶は、空だきして底を傷めると、さびが出て、お湯が濁ることもあり、当工房では、生漆を焼き付けて、お直ししています。部分的に、さびが進むと水もれの原因にもなりますが、その多くは、修理可能です。

底全体が薄く大きく割れたものは「半底」といって、底を型取りして鋳造し、入れ替えて修理することもあります。時代を重ねたものは、その風合いを大切に修理することを心掛けています。

1.さびて鳴り金の取れた釜


修理前
全体に、さびが出て色ムラがあります。内側も大変さびており、鳴り金が取れて無くなっています。



修理後
さびを取り除いて、鳴り金を付け直し、酸化鉄の顔料である弁柄(べんがら)で、色を調えた漆を焼き付け、本来の風合いが戻りました。
これで気持ち良く、お使いいただけると思います。

2.底を入れ替えられた釜の再修理(締め直し)


修理前
過去に修理された替え底が傷んでゆるみ、水漏れがするということで持ち込まれた釜の底です。
接合部に亀裂が入り、砥の粉と漆のつくろいがはがれています。内側も、さびに覆われ、鳴り金が取れたり、浮き上ったりしています。
ここまで進むと部分補修では難しいため、替え底を一度取り外して修理を行うことにしました。


修理中
替え底を外したところです。この底の切り方によって修理された時代がわかります。鳴り金も取り外しました。


修理後
再び底を取り付け、漆と鉄粉で練った金漆(かなうるし)でつくろいます。鋳肌に似せて少しずつ重ねていく、根気のいる仕事です。
鳴り金も新たに補って付け直しました。最後に元の風合いを残しつつ、色直しをしました。

3.注ぎ口の欠けた鉄瓶


修理前・後
鉄瓶の命ともいうべき注ぎ口が欠け、さびとミネラル分で口が狭くなっています。
昔は半田を鋳掛けた修理も見受けられましたが、現在では溶接技術で鉄を盛り上げ、形を整えると、丈夫で自然な修復が可能になりました。湯のきれを確認し、色漆で色をととのえました。

4.底に穴が開いた鉄瓶


修理前
さびが進んで部分的に薄くなり、5ミリほどの穴が開いた鉄瓶です。
さびを取り除くと穴は1センチ以上に拡大しましたが、周囲は厚みがあり、しっかりしていましたので、修理を進めました。
長年、日常的に使われていた鉄瓶は、茶の湯釜に比べて、状態が厳しいものも多く、腐食が進み、底の厚みが卵の殻のように薄くなって
割れや穴がある場合は底を入れ替えて修理します。


修理後
穴と同じ大きさに加工した鉄の板をはめ込み、金漆(かなうるし)で補修し、色を付け直しました。
なお、底を修理した釜や鉄瓶は、弱火もしくは遠火で、お使いいただきますようお願いいたします。

5.唐銅蓋(からかねぶた)の色直し


修理前
長年のほこりに覆われ、打ち物の菊つまみも黒く沈み、裏も縁に本体の鉄さびが移っています。


修理後
菊つまみは、銀製の本来の輝きを取り戻しました。鉄さびを払い、拭き漆で色直ししました。
龍文堂造と銘がありますが、江戸時代から京都で鉄瓶などを多く手掛け、その名を馳せました。

6.唐銅風炉の色直し


修理前
灰に触れていたところが銅のさび、緑青(ろくしょう)で覆われています。
また腐食が進み小さな穴が開いた所は、さびが外側にまで拡がっています。


修理後
中のさびを取り除いて、穴をふさぎ、漆にススを加えた黒漆で色直しをしました。
外側は表面を傷めないよう、注意深く、さびを落とし、色漆で色を合わせ、酒に鉄片を漬けてつくるオハグロでツヤを出します。
漆の塗布、オハグロ掃きをくり返し、周囲との調和をとりました。